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ネスとわたしのこと



「ラベルの、水の戯れが好きなんだ」と、ナオコさんが言った。
あれは、新宿のmotionでライブをした時だったと思う。いつのことか、日付はすっかり忘れてしまった。

※※※

遡れば、ネスと出会ったのは下北沢のbasementbarだったと思う。ネスのお二人から声をかけてくだすった。
たしか、ナオコさんはまだ髪が長くて、ピアノを軽やかに弾く姿が印象的だった。コムジュンさんのドラムも素晴らしくて、正直言うと、私はお二人にびびっていた。
そんなお二人から、「とっても素敵だね!」とニコニコ声をかけてもらったから、面食らってしまったのだった。

音楽にとって、「技術」というものをどう捉えるのか、というのは、その人の立場によって考えが如実に出ると思う。
「技術がある」「演奏が上手い」ということは、時に褒め言葉にならないことがあるかもしれない。
だから、この言い方をすると、誤解があるかもしれないんだけど、ネスのお二人に声をかけてもらったときに、
「こんなに上手なひとたちなのに、あるはるかのこと、いいって言ってくれるんだ・・・!」
というのが、正直な気持ちだった。

そんな出会いから、あの新宿motionでお話したのは、どれくらい時間がたったころだったんだろう。
あの日のmotionで、はじめてお二人とじっくりお話したのだった。
そのときに、ナオコさんが教えてくれたのが、ラベルの「水の戯れ」だった。
youtubeで探して聞いてみると、ほんとうに、タイトル通りの曲で、(とっても美しい曲です。ぜひ探して聞いてみてください!)そこからしばらくはラベルばかり聞いていた。
きらきら、きらきら、水面の美しい光を反芻するような音楽。こういう音楽が好きなひとが、ライブハウスにいるんだなあと思った。
音楽以外の話もして、お二人のことが、ぐっと身近になった素晴らしい時間だった。

※※※

これはこの間の話、北参道ストロボカフェで行われたネスの企画に呼んで頂いたときのこと。
お二人が、「さえぐささんの文章がとっても好きなんだよ」と言ってくれた。

私は、自分の文章を褒めてもらうと、とっても弱い。文章を書くのが好きだから、言葉に関して何か言及されると、そこは弱点モロ出しでもあるので、「うっ!」となる。
で、あるからして、お二人に褒めてもらったことによって、恥ずかしいけど、飛び上がるほど嬉しかった。(褒められた瞬間を目撃していたななちゃんに、「ふみちゃん嬉しそうだねー!」とニヤニヤ言われたほど。)

いつも、ナオコさんも、コムジュンさんも、私の目をまっすぐみて話してくれる。思っていることをまっすぐに伝えてくれる。
だから、お二人からもらった言葉は、私のお守りになる。こころの中の、「大事なものゾーン」に、すっと、おさまる。

※※※

これもこの間の話、稲毛K'sDREAMに出演した際、お二人がライブを見にきてくれたときのこと。
前のブログにも書いたけど、お二人と帰り道が一緒で、稲毛駅からしばらく、電車に揺られながら横並びでお話した。

話の流れで、松崎ナオさんのお話になった。そのときに、ナオコさんは、「嘘がないから、大好きなんだよね」と言った。
音楽活動をすることについて、つらつら、話をしていたのだけど、この、「嘘がない」ということが、ナオコさんとコムジュンさんにとって、ひとつの芯になっていることが伝わってきた。

「嘘がない」ということ、このことも、技術の有無と同じように、どのように捉えるのか、その人の考えによって180度違う答えが出ることだと思う。「嘘をつかないで音楽をする」ということをどう捉えるのか、それはあるはるかの活動を通して、自分が繰り返し問答し続けていることでもある。

いま、自分が仮に持っている答えは、2つ。(あくまでも、自分が音楽をする上でどう考えるか、という話!)

「嘘がない音楽というのは、乱暴に演奏をすることじゃない」ということ。「嘘がない音楽を演奏するということは、感情を客席に投げつけることではない」ということ。
つい先日、千葉motownclubでネスのライブを見て、そのことを再確認した。

お客さんが10人座ればいっぱいのような空間で、ドラムはほとんど生音だし、ライブハウスのような音響があるわけではない場所だった。
当たり前だけど、お客さんが目の前にいるから(ほんとうに目と鼻の先だった!)ドラムの音は小さいし、コーラスだって大きな声で歌えばハウリングを起こしてしまう。アップライトピアノだって、乱暴なタッチで弾けば、良い音では鳴らない。
だから、お二人は、手放しで音楽をしていなかった。ネスの音楽を、ちゃんとネスの音楽としてお客さんが受け止められるように、決して演奏を手放しですることがなかった。

考えて、丁寧に演奏されるネスの音楽は、決して大きな音ではなくて、ほんとうに小さな音での演奏だったのに、会場中にめいいっぱいに広がっていた。そんな夜だった。
ピアノとドラムと人間の声しかないのに、たったそれだけなのに、音楽が広がって、まっすぐ私の「大事なものゾーン」に飛び込んできた。だから、ボロボロ、ボロボロ、泣いてしまった。
こころのなかの「大事なものゾーン」に、ネスの音楽と、ナオコさんとコムジュンさんの言葉と、お客さんの拍手が飛び込んできて、ああ、音楽っていいものだなあという月並みな言葉にたどり着くしかない感情が湧き上がって、たまらなくて、泣いてしまった。
それは、どんな轟音よりも私のこころを揺さぶって、こころがほどけていくような時間だった。

※※※

テコの原理と2マンライブをやらせてもらって、「よし、さあ、また企画をやるぞ!」となったとき、まず一緒にやりたいと思ったのがネスだった。
これだけ言葉を連れてくるほど、ネスの音楽は、良いです。ふふふ。

今だから、ネスと、良い夜を作ることができると思っています。少し前の自分たちでは、多分できなかった。
ツアーを経て、今の自分たちだから、ネスの音楽と、あるはるかの音楽で、良い夜にできる自信があります。
どうか9月29日19時半、吉祥寺WARPでお会いできますように。ネスとあるはるかで、待ってます!